せっかく飛行機に乗るのならその機種や特徴を知っておきたいですよね。ここでは旅行者がよく話題にする飛行機の特徴や違いをいくつかのポイントにわけて初心者向けに解説します。
旅客機の機種や機内の違いで注目したいポイント
みなさんは旅客機を見て、それがどこのメーカーのどの機種かわかりますか?一見すると同じように見える飛行機にも様々な違いがあります。
飛行機に乗って旅行へ行くだけならそれがどこの飛行機かわからなくても問題ありませんが、旅行上級者を目指すなら飛行機についての知識は欠かせません。航空券を予約する際には当日の機材がどの機種かが表示されています。その機体がどういったものかを知っておけばより旅の楽しみも広がるでしょう。
ここでは主に日本で旅客機として使われている飛行機の全体的な状況やその違いなどをざっくりとご紹介します。これだけ知っていれば中級者レベルの話についていけるくらいの知識内容をしっかりとまとめました。
航空機メーカー、ボーイングとエアバスの競合機種
みなさんが航空券を買うのはJALやANAなどの航空会社からですが、航空会社は航空機メーカーではありません。航空会社はメーカーから飛行機を購入し、これを運用します。
世界中に様々な航空機メーカーがありますが、現在世界で最も大きいのはボーイング(Boeing)とエアバス(Airbus)です。ボーイング社は日本では知っている方も多いと思いますがエアバス社の名前は聞いたことがない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日本の航空会社では長年ボーイング社の機体を主に使ってきました。そのためエアバスという名前を聞くことは少ないのですが、この2社はほぼ同じ規模の世界の2大航空機メーカーです。
ボーイングはアメリカに本社を置く会社で、ジャンボジェットとして知られるB747などを製造しています。機種の名前にはBoeingのBが前に付き、7*7が続く構成となっています。
一方エアバスはヨーロッパ諸国の共同出資による会社で、フランスに本社があります。総2階建てで知られるA380などを製造しています。製造する機種の名前にはAirbusのAが前に付き、3*0などが続く構成となっています。
エアバス機 手前からA320、A330、A350、A380 (Airbus)
ボーイングとエアバスはライバルであり機種のラインナップも似たような性能のものとなっています。ここではそれらを比較しながら2社のライバル機種の一部をご紹介します。
大型4発機 B747とA380
これらの機種は2社の最大サイズの機種となり400人以上の乗客を運ぶことができます。ボーイングのB747はジャンボジェットとして長く親しまれた機体であり多くの方が知っているものと思います。しかしながら現在では機体の大きさや燃費性能の問題から退役が進み、日本では旅客機として運用している航空会社はなくなってしまいました。
エアバスのA380は総2階建てで知られる世界最大の旅客機です。日本ではANAが3機導入し「フライングホヌ」の愛称で海亀のデザインが施されています。
2007年にシンガポール航空により初就航となった比較的新しい機種ではありますが、このサイズの客室を埋めるだけの旅客を集めるのが難しく、大きすぎるサイズのため就航できる空港が限られ、燃費性能もそれほど良くなかったことから受注が伸びずすでに生産停止となっています。
また、新型コロナのパンデミックにより世界的に旅客需要が減ったため多くの航空会社でA380は運航停止となり、上記の理由もあるためこのままその多くが退役になるとみられています。
B747とA380はどちらもエンジンが4つ付いた4発機となりますが、技術の進歩によりエンジンの性能と信頼性が向上してきたため現在はエンジンが2つの双発機が主流となっています。
大型双発機 B777、B787、A350、A330
これらの機種はエンジンが2つの双発機であり、座席数が300~400席程度の大型の機材の中で主流のものとなっています。日本からアメリカやヨーロッパなど長距離の便に乗る場合はこれらのうちのどれかになると思います。
大きさ(客席数)については、ボーイングではB777 > B787となっています。エアバスではA350 > A330となっています。大きさについては下記に示すように同じ機種でもタイプの違いなどにより幅があります。
これらの中ではB787とA350が各社の最新鋭の機種です。従来は機体の構造にアルミなどの金属が主に使われていましたが、これらの機体ではカーボン繊維が多く使われることで軽量化され、燃費性能が向上しています。
B787については客室の窓に電子カーテンが採用されており、他の機体とは異なるためB787であることがすぐにわかります。ただ、この電子カーテンについては使い勝手が悪く光を完全に遮ることもできないため、太陽が出ている方向の窓側の席に座るのはお勧めできません。
B777とB787についてはJALとANAが運航しています。A350は日本ではJALだけが運航していますが、エアバス社の大型機を日本の航空会社がメイン機材として運航するのは珍しいです。
A330は日本の航空会社では運航されていませんが海外では主流な大型の機材であり、海外の航空会社で航空券を購入するとA330に乗ることになることも多いでしょう。
中型機 B737とA320
こちらは200席程度の中型の機材で、世界で最も多く運航されている2機種です。この200席クラスの機体は旅客の需要に合わせやすいサイズであり、航空会社としては経営面でも安定させやすいため特にLCCで積極的に採用されています。
航続距離がおおむね5時間ほどと限定されているため日本から海外に行く場合はより大型の機材で運航されていることが多いのですが、中国東海岸、ベトナム、フィリピンなどの距離でしたらこれらの機材が就航していることもあります。
ここではこれらの飛行機を中型機と表現しましたが、分け方によっては上記のB787やA330を中型機、こちらのB737とA320を小型機と表現することもあります。なお、さらにこれらより小型の機材や100席より少ないリージョナル機なども国内、海外で運航されています。
機内のサイズ、ワイドボディとナローボディ
飛行機の客室のサイズでも一つ大きなカテゴリー分けがあります。それがワイドボディ(広胴機)とナローボディ(狭胴機、単通路機)です。ワイドボディ機は胴体がより太いため客室内に通路が2本あり、ナローボディ機では通路は1本となります。
これは上記でご紹介した大型機と中型機の違いと一致しています。
ワイドボディ機のほうが客室内の空間が広いため解放感があり、ナローボディ機は少し圧迫感があります。とはいえナローボディ機であるB737やA320は十分な大きさのある機体ですので天井が低いなどのような狭さを感じるほどではありません。
また、客室が大きくても実質の広さ狭さは座席の幅と前後間隔によりますので、これはその航空会社の座席設定や、エコノミーやビジネスなどの座席クラスによって大きく変わってきます。
機内レイアウトとシートピッチ
機内の横方向の座席数は旅の快適性に大きく影響します。ワイドボディ機の場合、多くは2本の通路の窓側は3席、通路の間の部分は3席か4席となっておりこういった配置を3-4-3や3-3-3などのように表現します。
同じ機材であっても横の座席数は航空会社によって異なることがあります。その場合、横の座席数が少ないほうが1席あたりの幅が広くなるためより快適です。
ナローボディ機の場合は通路の両側に3席ずつの3-3のレイアウトであることが一般的です。
これらはエコノミークラスの座席についてであり、ビジネス、ファーストクラスになると座席ごとの横幅がより大きくとられ、全体的な配置も航空会社によって大きく異なります。
前後の座席間隔(シートピッチ)は横幅以上に航空会社ごとの差があります。乗客にとっては足元がゆったりしていたほうが快適ですが、航空会社にとっては前後の間隔をつめたほうがより多くの乗客を乗せることができますのでそのバランスに航空会社の方針が現れます。
一般的には79cm(31インチ)程度のシートピッチを採用している会社が多いですが、ピッチが広い航空会社では86cm(34インチ)程度に設定している会社もあります。逆に狭い航空会社では71cm(28インチ)程度となっており、体の大きい方ですと膝が前の席に押し付けられてつらいこともあります。
また、前後の間隔だけでなく座席そのものを改良し厚みを薄くしたシートも開発されているため、単純にシートピッチの数字だけでは快適さは比較できません。
機種ごとのファミリーとタイプ構成
ここまで旅客機の様々な違いを述べてきましたがさらにわかりにくいやっかいな違いがいくつかあります。上記で紹介したような旅客機は、胴体の長さが違ったり、飛べる距離が違うような、ファミリーやタイプと呼ばれる派生型があります。
例えばボーイング787の場合、B787-8、B787-9、B787-10という3つの派生型が存在します。これらは胴体の長さが異なり、-8 -> -9 -> -10の順に長くなっており客席数も多くなっています。それ以外の胴体の太さ、翼、コックピットなどはほぼ同じものです。
B787の派生型 (Boeing Global Services)
このように長さの異なる派生型がほとんどの機種に存在するため、どちらの機種のほうが大きいのか?といった比較がしにくく、また見た目の印象も派生型によって大きく変わるため慣れない方がどれがどの機種なのかを判断しにくいという問題もあります。
また、見た目では分かりませんが燃料タンクを増設したロングレンジタイプというものもいくつかの機種には存在します。
例えばエアバスのA320にはA321という胴体の長いタイプがあり、さらにこのA321にはA321LR(ロングレンジ)やA321XLR(エクストラロングレンジ)といった長距離を飛ぶことができるモデルがあります。
これらのモデルは比較的最近開発されたモデルで、従来のA321では飛ぶことができなかった距離まで飛ぶことができるためいままで大型の機材でしか就航できなかった路線に今後これらの機材が就航することも増えてくることは間違いないでしょう。
ジェットエンジンとプロペラ機
これまでに挙げてきた飛行機は全てジェット機ですが、プロペラ機も旅客機として運航されています。日本国内でもJAL、ANAのグループ会社やオリエンタルエアブリッジのような会社が使用しています。
これらは100席より少ない座席数で、短い滑走路でも離着陸できるという特徴があるため離島へのフライトで重宝されています。離島のリゾートに遊びにいく際にはお世話になることもあるかもしれません。
航続距離が長くはないため日本から海外への便はありませんが、ジェット機よりも低い高度で飛行するためちょうどよい高さで景色を楽しむことができます。
飛行機については奥が深く、その全てを理解することはむつかしいのですがそれゆえにファンの方もいっぱいいらっしゃいます。
次に飛行機旅行へ行かれた際には、旅行先だけではなく飛行機についても是非楽しんでいただけたらと思います。