航空機内の安全ルールについて、ひとつひとつ丁寧に解説しています。飛行機に乗る前に必ず読んでおいてほしい内容です。
飛行機の搭乗客が知っていなければいけない安全ルール
飛行機には他の交通機関にはないルールがいくつかあり、乗客はこのルールを知っていなければなりません。そのため航空会社はこの安全ルールを事前に乗客に知らせないといけないことになっており、機内安全ビデオがモニターで流され、出発前の機内では客室乗務員による安全デモンストレーションが行われます。
これらの説明は各航空会社の現地の言語と英語で行われます。これらの安全のためのルールは世界共通であり、一度理解できると世界中のどこの航空会社に行ってもデモンストレーションが分かるようになります。
このルールは「飛行機が好きな人は知っている知識」というようなものではなく、すべての乗客が必ず理解していなければならないものです。これに違反すると刑事罰を受けることもありますので注意してください。
しかし残念ながら飛行機に乗ったことがある方でもこのルールを知らなかったり、ルールの意味が正しく伝えられていないことがありますので、初めて飛行機に乗る方だけでなくいままで知らずに乗っていた方にも完全に理解していただけるようにこの記事を作成しました。
機内安全ビデオの各項目ごとの説明と注意事項
各航空会社は機内安全ビデオを乗客に見てもらうために工夫を凝らしており、独自のユニークなものを作成しています。しかしながらこれらは本来の機内での場面から離れてしまっているものが多く、初めて飛行機に乗る方には理解しにくいものとなっています。
JALの機内安全ビデオはシンプルで初めての方にもわかりやすいものとなっていますので、この動画を参考に解説していきます。この動画にはいくつかの項目が抜けていたり説明が不十分な部分がありますので補足しながら解説します。
機内手荷物の収納場所
機内の荷物収納場所は天井の収納棚と前の座席の下だけです。通路や周りの空いたスペースに置くことはできません。機体が強い衝撃を受けた際にそれらの荷物が吹き飛んでしまいます。 収納できるスペースが足りないときは乗務員に声をかけてください。
足元に荷物を置くときは必ず前の座席の下に押し込んでください。ご自分の足と自分のシートの間に荷物を置くことはできません。
シートベルトの着用
シートベルトは離陸、着陸の際は必ず着用してください。お腹に負担がかかるまできつくする必要はありませんが、できる範囲で強めに締めてください。離陸後しばらくすると天井にある着用サインが消えシートベルトを外すことができますが、機内にいる間は常にシートベルトを着用することを強くお勧めします。その場合はベルトをゆるめにしておいてもかまいません。
飛行中は突然の強い乱気流に巻き込まれる可能性があります。これは事前に感知することができず、サービス提供中の客室乗務員が天井に頭を叩きつけられ怪我をする事故も毎年発生しています。ベルトサインが消えてもシートベルトは着用しておいてください。
妊娠中の方のシートベルトの着用は乗務員にご相談ください。
座席、テーブル、窓のポジション
JALのビデオにはありませんが、離陸着陸の際には座席のリクライニングを元の位置に戻し、テーブルを収納しなければいけません。これは、離陸の中断や衝撃の強い着陸があった際に被害が大きくなるからです。
また、離着陸の際には窓の日よけを上げ外が見える状態にしなければなりません。非常脱出の際に乗務員が外の状況を確認し、安全に避難できるように誘導するためです。
機内は禁煙
飛行機内は法律により禁煙となっています。電子タバコも同様に禁煙です。喫煙エリアはありません。隠れてトイレでタバコを吸う方がいますがトイレ内には煙感知器があります。違反した場合は逮捕されます。
電子機器の使用制限
スマートフォンなどの電波を発する機器は使用できません。電源を切るか、機内モードにしてください。機内でwifiが使えるサービスを提供している航空会社ではこのルールが異なる場合がありますので乗務員に確認してください。
このルールは「強い電波を発する通信機器」についてのものですので、例えばカメラ、ビデオなどの電子機器は使用することができます。
JALでは言及されていませんが、機内にはUSB電源が用意されている会社もありますが、近年リチウムイオンバッテリーからの火災が問題となっており、離着陸中の充電が禁止されている航空会社もあります。
--- ここからは非常時のルールです ---
酸素マスクの使い方
上空でトラブルが起き、機内の与圧が保てなくなった場合には酸素マスクが天井から出てきます。動画では「強く引いて」マスクを着けるとさらりと言っていますが、必ず強く引いてください。強く引くことがトリガーとなり酸素が出るようになります。ただ口元に持っていっただけでは酸素は出ません。
子供と一緒の場合、子供よりご自分の酸素マスクを先に着けてください。機内の与圧がなくなると高度によって10秒程度から数分で意識がなくなりますが、そのまま窒息してしまうわけではありません。子供に先にマスクを着けたあとにご自分が意識を失ってしまうと子供はマスクの意味を理解できずマスクを外してしまうかもしれません。子供が意識を失ってしまったとしてもあとからマスクを着けてあげれば大丈夫ですので、まずご自分のマスクを着けたのちに子供にも着けてあげるようにしてください。
衝撃に備える姿勢
飛行機が緊急着陸をするような時には乗客は衝撃に備える姿勢をとらなければなりません。動画では伝えられていませんが、これは着陸の瞬間のためのもので、機体に異常があったとしても上空で常にこの姿勢になるわけではありません。衝撃に備える姿勢をとるタイミングは客室乗務員が知らせます。着陸の直前に「前にかがんで、頭を下げて、顔を下げて、」などの呼びかけが大きな声で繰り返されます。英語では「Brace for impact, Heads down, stay down」などの用語が使用されます。
この姿勢は、衝撃の際に頭をぶつけないこと、飛んでくるものから頭を保護することなどを目的としており最適な姿勢が研究されてきました。2020年4月にICAO(国際民間航空機関)により推奨される衝撃姿勢が示されました。
この図のように頭の上に両手を置く場合は、指はクロスさせず手と手を重ねるようにしてください。衝撃で指が折れます。
救命胴衣の使い方
海上、水上に不時着した際には救命胴衣を着用します。地面に不時着した場合には救命胴衣は不要です。救命胴衣は座席の下、ご自分の足と足の間にあります。
救命胴衣には小さい圧縮空気のボトルが装備されており、機内から外に出る際にレバーを引っ張って膨らませます。客室乗務員の離陸前のデモンストレーションでは赤いチューブに息を吹き込んでいますが、これは膨らみが足りなかったときのためのものであり、自分の息で膨らませるものではありません。
救命胴衣を膨らませる時は必ず救命胴衣を着てから膨らませてください。救命胴衣はかなり大きく膨らむため、膨らませたあとで着ようとしても着ることが困難になります。
また、機内では救命胴衣を膨らませないでください。狭い通路を通るのに妨げになり脱出が遅れます。さらに、首回りが大きく膨らみ足元の視界を遮るため周囲に注意を払うことが難しくなります。
非常口の場所の確認
飛行機に乗り降りするためのドアは非常口としても使われます。また、翼の上の側面にも非常脱出用のドアがあります。これらの全てのドアから脱出することができますが、機体の損傷具合や火災の状況によりそのドアが使えないこともあります。どのドアから脱出するかは乗務員が指示します。
機内に乗り込む際には多くの場合は機内前方のドアからですが、座席位置によっては自分の座席のすぐ後ろ側に別のドアがあるかもしれません。ですので、座席につく際は、その後ろ側により近い非常脱出口があるかどうかを確認しておきましょう。
動画にはありませんが、夜間に非常脱出となり機内の灯りが付かなかった場合、通路に沿って足元に非常用の誘導灯が点灯しますのでこれを見ながら移動してください。
脱出時に荷物を持たない
非常脱出の時には荷物を持たないでください。天井の荷物棚を開けて荷物を取り出すと通路をふさぐことになり他の人が通れなくなります。実際に、機内で火災が発生し非常脱出の際に荷物を取り出し通路をふさいだことでその後ろの何名かが助からなかった事案が発生しており、この事故では荷物を持って脱出した人の刑事責任を問う声が上がっています。
脱出スライドの使用
ドアからは脱出用のスライドが出るようになっています。非常時にはこれを使って脱出します。脱出スライドは空気で膨らむようになっており、穴が開いてしまうことがあるため細いハイヒールを履いている場合は脱いでください。
飛行機のドアはかなり高い位置にあり、スライダーの手前まで来ると怖く感じるかもしれませんが、とまどっている時間はありませんのですぐに脱出してください。地面に到達する頃にはかなりのスピードが出ますので注意してください。着地の際に転んだとしてもできるだけその位置から離れるように努めてください。後ろからどんどん人が降りてきます。
地上に降りたあとはそのまま機体から離れてください。燃料に引火し機体が爆発する可能性があるため危険です。
動画にはありませんが、離れたあとはできるだけ他の方と一緒に集まっていてください。この後、消火などのために緊急車両がたくさんやってきます。倒れたり寝転んだりしていると緊急車両にひかれる可能性があります。
安全のしおり
前の座席ポケットには「安全のしおり」というものが入っています。その機体のドアの位置や上記のような禁止事項や安全確保の方法が示されています。席についたら必ず目を通すようにしましょう。